発想源より

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  楽しそうな楽器屋さん

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 つい先日、渋谷の街を歩いていると偶然、楽器屋さんを見つけた。
 時間があったので、店に入ってみた。
 楽器店に入るのは久しぶりだった。

 たくさん並んでいるギターを見ていると、
 若い男性の店員が笑顔で声をかけてきた。

 「もしよろしければ、試しに弾いてみて下さい」

 
 僕はプロフィール欄にも「400曲以上を作った」と書かれているが、
 作曲はするけども実は楽器はほとんど弾けない。(誰か教えて)

 そこで「弾けません」と正直に話すと、
 その店員はギターについていろいろと教えてくれた。

 このギターはいい、あのギターはここが良いという話ではなく、
 クラシックギターとフォークギターは何が違うのか、
 どんな曲の時にはどのギターが良いか、などという
 一般的なギターの話だった。

 「弾けなくても構いませんから、ギター触ってみませんか」

 といって彼は、クラシックギターを一本選んで調弦すると、
 楽しそうにポロロンと弾き始めて、その後に僕に手渡した。

 あまりに楽しそうに弾いていたので、それにつられてか、
 弾けないのにかき鳴らしてみたくなり、
 Eマイナーのコード(超簡単)を抑えて弾いてみた。

 「フォークギターはもっと弦が硬いですから、
  しゃんしゃんという感じでまた違った音が鳴りますよ」

 と、今度はフォークギターを持ってきてチューニングをし、
 また楽しそうにジャラジャラと弾き始めた。

 本当に楽しそうに弾くので、ついつい聞いてみた。


 「ここのお店の店員になるにはギターが弾けなければならないとか、
  そういう決まりがあるんですか?」

 「いえ、ありませんよ。もちろんみんな楽器が好きだから
  働きに来るんですけどね。
  これでも、僕が店員の中では一番下手なんですよ」

 そう言って、彼はまた楽しそうに弾き始めた。



 そうこうしているうちに、ギターを買ってしまった…。

 僕はギターがそんなに弾けるほうではないので、
 ただギターを眺めたり説明を受けたりするだけでは
 そんなに欲しいと思わないはずだ。

 しかし、目の前で楽しそうに弾いているのを見て、
 「これぐらい弾けたら楽しそうだな…」と思えたのだろう。

 「自分は店の中で一番下手です」と聞いて、
 「そんなに上手くなくても楽しいですよ」と思えたのかもしれない。

 何も買うつもりもなく店に入ったけれど、
 その場でギターを買うことを決めてしまったのである。



 実際に目の前で楽しそうにやってみる。
 実際に目の前で美味しそうに食べてみる。
 何よりも自分たちがまずその良さを実際に見せてみる。

 お客様にその良さを伝える、最も良い方法かもしれない。
 と思った。



 自分が「つい買ってしまった」いう時は、どんな時か。
 モノを買うときは必ずそれを書き留めておきたいですね。
 そこに販売のヒントがあるかもしれない。